安定・多収栽培のポイント
多くの収量をあげることにより、結果的に生産コストの低減につながります。飼料用米専用品種は主食用品種と比べて多収となる特長がありますので、その特長、特性をよく理解し、専用品種の能力を最大限に発揮できるように、それぞれの生育段階で適切な栽培管理を行い、収量向上を実現しましょう。
このページの目次
播種・育苗
播種量
10a 当たり3~4kg(乾籾)とします。
(注)多収性専用品種の種子サイズは主食用品種よりも1~3割大きいため、適正な苗立ち数が確保できるように品種に応じて播種量を増やす。
品種別の1箱当たり播種量(乾籾)
品種名 | 播種量(g) |
---|---|
夢十色、オオナリ、北陸193号、あきだわら、月の光 | 160 |
べこごのみ、クサホナミ | 180 |
夢あおば、モミロマン | 190 |
べこあおば、ホシアオバ | 210 |
浸種
水温10~15℃で積算温度60~80℃を目標に行います。
(注)「あきだわら」「月の光」「あさひの夢」などは積算温度120℃で、浸種をやや長めに行います。
種子消毒
使用する薬剤の登録内容や適用の有無を確認して適切に行いましょう。
(注)ばか苗病やいもち病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、イネシンガレセンチュウなどの病害虫は、「あさひの夢」 では60℃10~15分または65℃10分、「月の光」および「夢あおば」では60℃10分の温湯処理により防除ができる。
播種時期
稚苗にするまでの期間は、4月上旬播種の場合で20日間程度です。5月上旬播種であれば15〜20日間です。
田植え
作業時期
できるだけ5月中に行いましょう。田植えが遅れると茎数確保が難しくなり、収量が低下したり、多収性専用品種でも茎が長稈化して倒伏しやすくなります。
移植時期と収量・倒伏の関係
栽植(植付)密度
多収性専用品種は穂重型で分げつが少ない品種が多いため、極端な疎植は避けましょう。株間は18cm程度、株数は坪当たり50~60株とします。
水管理
分げつ発生期
田植え後20~40日間は2~3cm の浅水で管理して、茎数の発生を促します。
中干し・間断かんがい
有効茎数が確保できたら中干しを行います。そのあとは間断かんがいによって根に酸素を供給し、根の活力維持を図ります。
落水
出穂後30日以降を目安とします。
用水の確保
晩生品種を利用する場合や、早生・中生品種でも田植え時期が遅れ、出穂時期が遅くなった場合、用水が停止することで登熟に悪影響を及ぼす可能性があります。送水の停止時期については、事前に土地改良区等に確認し、出穂後の早い時期に停止する場合には、直前に排水をせき止め、できるだけほ場へ水を溜めて用水確保に努めてください。
施肥
飼料用米は食味や玄米の外観品質を考慮する必要がないため、収量向上のために施肥量を増やします。「コシヒカリ」と比較した施肥量の目安は次の通りですが、土質および地力を考慮して決定するようにしてください。
基肥
「コシヒカリ」の施肥量に対して+4~6kg/10a程度(約1.5~2倍)を目安に増肥します。
穂肥
出穂前20~25日を目安として、「コシヒカリ」の施肥量に対して+1~2kg/10a程度を目安に増肥します。
土壌型別の施肥量
単位:kg/10a
N基肥 | P2O5基肥 | K2O基肥 | ||
---|---|---|---|---|
泥炭・黒泥土壌 | 粘質 | 8〜10 | 8〜10 | 8〜10 |
壌質 | ||||
強グライ・グライ灰色・灰褐色土壌 | 砂質 | 10〜12 | 10〜12 | 10〜12 |
火山灰土壌(陸田) | 粘質 | 11〜12 | 11〜12 | 11〜12 |
壌質 |
雑草防除
使用薬剤の登録内容や適用の有無を確認のうえ適正に使用しましょう。
薬害への注意
飼料用米専用品種には、ある特定成分を含む除草剤を使うと、枯れてしまうほどの薬害を生じるものがあります。除草剤の使用にあたっては最寄りのJAや地域農業改良普及センターなどに確認して使用しましょう。
(例)夢十色、タカナリ、オオナリ、モミロマン、ミズホチカラは、「ベンゾビシクロン」、「テフリルトリオン」「メソトリオン」を含む除草剤に対して薬害を起こしやすい。
病害虫防除
抵抗性品種の導入や病害虫の発生予察を活用し、防除対策を行います。薬剤を使用する際は、薬剤の登録内容や適用の有無を確認のうえ適正に防除を行いましょう。
薬剤使用上の注意
籾米をエサ給与する場合は原則として出穂期以降の薬剤散布は控えます。防除の必要がある場合は、使用できる薬剤を「多収品種の栽培マニュアル」(農林水産省令和3年1月更新 ホームページで公開)などで確認して適切に使用しましょう。
収穫
収穫適期
穂首近くに緑色を残した籾が10%程度になったとき以降です。
作業上の注意点
飼料用米専用品種は籾やわらの量が多く、茎も固くて太いため、コンバインへの負荷が大きくなります。コンバインのエンジン回転数が低下する場合は、作業速度を遅くするか、刈り取る条数を減らす、刈り取る位置を高くするなどしてエンジンの負荷を減らしましょう。
乾燥・調製・保管
乾燥基準
籾米や玄米として長期保存する場合は、玄米水分が15%になるよう乾燥します。
立毛乾燥のすすめ
倒伏に強く脱粒しにくい品種を利用し、鳥害被害に注意しつつ田んぼで刈り取りを成熟期後2週間から1カ月遅らせます。立毛乾燥を行うことによって、玄米中の水分を低下させ、乾燥時間や燃料費を抑えることができます。
保管時の注意点
飼料用米では過乾燥による食味の低下は問題になりませんが、乾燥が不十分な場合には保管時にカビなどが生じやすくなります。
籾すり時の注意点
飼料用米専用品種は籾が大きいため、ロール開度に注意しましょう。