Ⅲ 需要に応じた生産・販売

生産者や集荷業者・団体が、需要に応じて、どのような米をいくら生産・販売するかなどを自ら決められるようにすることで、経営の自由度の拡大を目指します。

米政策の基本的な考え方

平成30年産から、行政による生産数量目標の配分を廃止し、生産者自らの経営判断により需要に応じた生産・販売が行われるようにしました。

農林水産省としては、

  • 事前契約・複数年契約による安定取引の推進
  • 麦・大豆や野菜・果樹、新市場開拓用米(輸出用米等)、加工用米、米粉用米などの、需要のある作物や主食用以外の米への転換に対する財政的な支援
  • 都道府県の地域再生協議会等を集めた全国会議を通じた、需給見通し等のきめ細かな情報提供
  • 主食用米を長期計画的に販売する取組等への支援

などにより、産地・生産者が、消費者・実需者のニーズを的確につかみ、どのような水田農業を進めていくのかしっかりと判断できるような環境整備に努めてまいります。

全国の需給見通し

米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針

令和5年10月19日公表

令和6/7年の需給見通し(令和5年10月)では、令和5年産の生産量の見通しと同水準の669万トンと設定しています。

令和5/6年及び令和6/7年の主食用米等の需給見通し
  • 欄外の記載は、コロナ影響緩和特別対策(特別枠)に取り組む令和2年産米を除いた場合の見通しであり、《》書きは特別枠に係る取組数量。
  • ラウンドの関係で計と内訳が一致しない場合がある。
(参考) 相対取引価格と民間在庫量の推移

相対取引価格は、当該年産の出回りから翌年10月(5年産は令和5年10月)までの通年平均価格であり、運賃、包装代、消費税相当額が含まれている(令和5年産は速報値)。

事前契約の取組の推進

今こそ事前契約が大切です

計画的な生産を行う重要性が高まっています。

  • 主食用米の国内消費量の減少は、人口減少により今後も続きます。
  • こうした状況下で産地が取り組むべきことは、あらかじめ販路を確保して売れ残りを発生させないことです。

消費者が求めるニーズをつかみましょう

主食用米の消費量が減少している一方、消費者ニーズの多様化が進んでいます。

家庭内消費から中食・外食での消費へ
消費者が精米購入時に重視するポイントの例
  • 美味しさで有名になっている産地や品種
  • 減農薬等こだわりのある栽培方法
  • お得感のある価格
  • 食べ比べがしやすい少量包装

多様化するニーズの中で「売れ残り」を発生させないために産地では、各流通段階の事業者の意向を適切にキャッチし、生産に反映することが大切です。

安定取引を可能とする有効な手法が事前契約です
産地

生産する米を確実に販売し、生産者の経営安定を図りたい

卸売業者・実需者

多様なニーズに対応できる米を安定的に調達、消費者に提供・販売したい

全国の事前契約(播種前契約)取組状況

事前契約(播種前契約)の割合は年々増加しており、令和5年産で32%、うち実需者と結びついた契約の割合は4%となっています。

資料:農林水産省「米穀の取引に関する報告」(年間取引数量500トン以上の集出荷業者)

全国の事前契約取組状況

需給・価格情報等に関する一層きめ細かな情報提供

各産地において、翌年産の主食用米等の作付を的確に判断できるよう、需給・価格、販売進捗・在庫情報等を取りまとめた「米に関するマンスリーレポート」を毎月上旬に発行しています。

米に関するマンスリーレポート

「米に関するマンスリーレポート」目次

  • 特集記事
  • 米の⺠間在庫情報
  • 米の価格情報
  • 米の契約・販売情報
  • 消費の動向
  • 輸出入の動向
  • 主食用米以外の動向

米穀周年供給・需要拡大支援事業で産地の自主的な取組を支援

需要に応じた生産が行われたとしても、豊作等により需給緩和が生じる可能性があることから、産地ごとにあらかじめ生産者等が積立てを行った上で、自主的に長期計画的な販売や輸出など他用途への販売を行う場合に支援する米穀周年供給・需要拡大支援事業を措置しています。

全国事業

  • 民間団体が行う業務用米の生産・流通の拡大に向けた展示商談会を支援(定額)
  • 新たな需要開拓に向けた商品開発・販売促進を支援(定額、1/2以内)
  • 海外業務用需要などの新たな市場開拓を支援(定額)

産地

産地

コメの輸出拡大を支援

国内では、コメの消費減に加えて、2010年をピークに人口減少の局面に入っていることから、年間需要量は毎年8〜10万トンずつ減少してきていますが、海外に目を転じれば、日本食レストラン数は増加傾向にあるなど、日本食のマーケットは世界で広がりつつあります。

このような中、コメについても新たな海外需要開拓を図っていくことが喫緊の課題となっています。

世界の日本食レストラン数
世界の日本食レストラン数
地域令和元年令和3年
欧州約12,200約13,300
アフリカ約500約700
ロシア約2,600約3,100
中東約1,000約1,300
アジア約101,000約100,900
オセアニア約3,400約2,500
北米約29,400約31,200
中南米約6,100約6,100

このような中、輸出事業者による需要開拓の結果、近年、コメの輸出は大幅に増加してきました。中には、多量に日本産米を取り扱う日本食チェーン店も存在しています。

コメの輸出実績
コメの輸出実績

コメ・コメ加工品の輸出では、一般社団法人全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会(全米輸)が会員である輸出事業者や産地とともにオールジャパンでの需要 開拓等を担ってきました。
令和4年12月5日付けで、全米輸は「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」(輸出促進法)に基づき、「コメ・パックご飯・米粉及び米粉製品」の認定品目団体として認定を受けました。
全米輸では、引き続き、オールジャパンでの需要開拓や現地ニーズの把握、商談会の開催等、業界全体の輸出力強化につながる活動を企画・展開し、また、輸出に関心のある方々への専門家による相談・サポートを行っています。

多量に日本産米を使用している外食チェーンの例
華御結(香港)
華御結(香港)
元気寿司(香港)
元気寿司(香港)
認定品目団体認定式の様子

コメ海外市場拡大戦略プロジェクトについて

  • 「コメ海外市場拡大戦略プロジェクト」は、コメの輸出量を飛躍的に拡大すべく、平成29年9月に立ち上げ。
  • 本プロジェクトは、目標及び取組方針を掲げてコメ・コメ加工品の輸出拡大に取り組む事業者・産地が参加可能なプラットフォームであり、参加者への支援を実施。
コメ海外市場拡大戦略プロジェクト
輸出事業者による取組事例1 生産者と連携した品質向上の取り組み

おむすび専門店を運営している(株)イワイは、海外の現地店舗で消費者へ精米したてのコメを使ったおむすびを提供。国内外店舗を問わず、店舗で使用される全てのコメを生産者と直接契約。現在、アメリカとフランスにそれぞれ2店舗あり、将来的には、海外で1,000店舗まで増やすことを目指している。
若手契約生産者を同行した、海外店舗での販促活動を定期的に実施。契約生産者と海外ニーズを共有。輸出用米作付け意欲向上にも寄与している。生産者と海外店舗スタッフとの意見交換を通じて、品質管理の重要性を改めて認識し、品質向上に寄与。

輸出事業者による取組事例2 産地と連携した需要開拓

茨城県の生産者が輸出用米の作付→集荷→輸出まで自ら取り組むべく「茨城県産米輸出推進協議会」及び輸出商社の「百笑市場」を設立。多収品種の導入により販売価格の引き下げと農家収益の確保の両立を図っている。当初、協議会の参加人数は8人であったが、2022年には89人まで拡大。輸出用米の供給量は1,200トン(2022年)まで増加し、2025年には輸出数量3,000トン、2027年には輸出数量6,000トンへ拡大を目指している。

輸出用米の生産数
輸出用米の生産数
展示会の様子
那珂湊港からの出港式の様子