地域の作物作付の現状、地域が抱える課題
本県は、畑作物の導入が困難な水田が多い中にあって、排水対策やブロックローテーションなどを推進して麦・大豆等の畑作物の定着を図るとともに、飼料用米を中心とした新規需要米等による転作を進めてきたところです。
結果、令和4年産米の価格についてはコロナ禍からの需要回復に加え、大規模な作付け転換の実現により回復基調に転じたところですが、主食用米の需給は依然として不透明な状況であり、国では、令和5年産においても、令和4年産と同程度の作付転換を実現する必要があるとしていることから、需要に応じた生産を一層強力に進め、価格の安定により農家所得の安定を図ります。
また、農業者の減少と高齢化が進み、耕作放棄地が増加する中で、農地の集積・集約化による規模拡大及びコスト低減を進め、経営安定を図る必要があります。
高収益作物の導入や転作作物等の付加価値の向上等による収益力強化に向けた産地としての取組方針・目標
本県では、これまで飼料用米を中心に主食用米からの転換を図り、令和4年産の主食用米の作付面積は前年に比べ 3,100haの減少と作付け転換が進み、現行制度になってから初めて目安とする面積を達成することができました。
一方、排水不良の水田が多いことなどから麦、大豆、高収益作物など定着性・収益性の高い品目への転換は限定的となっており、飼料用米への転換が5割を占めています。
このような中、水田の収益力を強化し、儲かる農業を実現していくためには、県・市町村の関係部局が連携し、生産技術・機械等の導入支援や生産基盤の整備を行い、高収益作物の導入を図っていく必要があります。
具体的な品目としては、トマト、たまねぎ、キャベツ、ねぎなど中食・外食において需要が拡大している品目やレンコン、かんしょ等、本県の全国シェアが高く、水稲から転換することにより所得の向上が期待できる品目を中心に、地域の特性や実情に応じて導入を図ります。また、米やかんしょについてはコロナ禍からの鎮静化を踏まえ、輸出の取組を強化していきます。
また、子実用とうもろこしやWCS用稲などは畜産物生産に必要な飼料ですが、多くを輸入に頼っており、国産飼料へ転換することで、自給率の向上と生産される畜産物の安心・安全といった付加価値を高めることにつながることから、その導入および拡大を図ります。
さらに、飼料用米については、多収品種の導入を進めることにより定着化を促し、産地化を図ることで、農家経営の安定化につなげていきます。
畑地化を含めた水田の有効利用に向けた産地としての取組方針・目標
県内水田面積約10万haのうち4割については、主食用米の需要減により、需要のある非主食用米や他品目への転換が必要です。主食用米だけでは米価下落時の経営に与える影響が大きくなることから、需要が見込める品目を経営に取り入れることにより、水田農業の経営安定化を図っていきます。併せて、従来の人・農地プランや今後策定される地域計画に位置付けられた地域の担い手への農地の集積、集約化を進めます。
転換を進めるにあたっては、将来にわたって連作障害を回避し、安定した収量を確保できるよう田畑輪換やブロックローテーションの構築を進めます。また、水田の利用状況の確認の結果、水稲作付を行わないで畑作物が栽培され、経営が効率化されている事案については、積極的に畑地化支援の活用を働きかけ、令和5年度までに畑地化の面積1,500haを目指します。
また、高品質安定生産技術の指導や、畑作物の流通・消費拡大に向けた助言等の支援を行うとともに、畑地化に向けた情報提供や、補助事業を活用した基盤整備の支援等により、畑作物の拡大及び定着を図ります。
なお、産地づくりに向けた体制構築支援を活用し、野菜等の展示ほ場を設置するなど、優良事例の横展開を進めることで畑地化の取組を強化するとともに、飼料用米も多収品種の種子確保に必要な取組支援により、産地化を進め、担い手農家の経営安定につなげていきます。